屋根のない博物館、慶州を歩く

夕日に照らされた慶州の古墳群と、その奥に連なる山

Maker Faire Seoul 2026 に向かう途中、慶州(キョンジュ)に寄り道しました。準備編の続きで、釜山に着いてから慶州を出るまでの2日間です。

釜山から空港バスで慶州へ

慶州を訪れるのは初めてで土地勘がなかったので、宿はご飯屋さんが多い、栄えたエリアで探しました。普通は駅前がこういう条件に合いますが、慶州駅は周りに何もなく、観光エリアからも離れていました。そうして出てきたのがバスターミナルのあたりです。皇理団ギル(ファンニダンギル)にも歩いて行けて、レンタサイクル屋も多いエリアでした。

泊まったのは Minihotel Poongdaengi(미니호텔 풍뎅이)で、2泊しました。シングルルームがあり、共有スペースでご飯も食べられます。

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釜山の金海空港からは、KTX ではなく空港バスにしました。宿の近くのバスターミナルまで乗り換えなしで行けるからです。切符は空港の券売機と窓口で当日に買えて、9,500ウォンでした。

海雲台で釜山の高層ビル群には慣れたつもりでしたが、バスの窓の外に高層マンションが30分くらい続いたのには驚きました。釜山は思っていた以上に大きい街でした。

慶州という土地

慶州は、慶尚北道の南東の端にある街です。ソウルから南東へ約370km、大邱から東へ約55km、釜山から北へ約50kmの位置にあり、東は日本海に面しています。街の中心は低い山に囲まれた広い盆地で、その盆地に古墳や史跡がたくさん残っています。

韓国の中では、歴史のある古都として知られています。1995年に韓国で最初の世界遺産になった石窟庵と仏国寺のほか、慶州歴史地域、良洞村も世界遺産に登録されていて、「屋根のない博物館」とも呼ばれます。年間約600万人が訪れる韓国有数の観光地で、2025年には APEC 首脳会議の会場にもなりました。

新羅の古墳

古墳が多いとは聞いていましたが、実際に来てみると、たしかに多かったです。慶州には200基を超える新羅の古墳があるらしく、街なかにもそのまま残っていて、不思議な景観でした。

日本人には「慶州」より「新羅」のほうが馴染みがあるかもしれません。自分も、歴史に出てくる「新羅」という名前にずっと憧れがありました。かつてここにあった新羅の都がどれほど大きかったのか、そのスケールにただただ圧倒されました。

慶州の面白さは、ソウルなどで見てきた朝鮮王朝の時代とは、歴史の年代が違うところです。新羅の時代の古墳がそのまま残り、仏教の寺院もあります。同じ韓国でも、見えてくる歴史がまったく違います。

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慶州のご飯

慶州に着いて、まず名物のムクヘジャンクク(묵해장국)を食べました。

ヘジャンククは、韓国の酔い覚ましのスープです。地域ごとに名物があり、ソウルの清進洞(チョンジンドン)は牛の血を固めたソンジ入り、楊平(ヤンピョン)は豚の背骨入り、全州(チョンジュ)は豆もやし入りがよく知られています。慶州のヘジャンククは、そば粉で作ったムク(메밀묵)と豆もやしが入るのが特徴です。店が集まる通りには、1980年代には30軒ほどが並んでいたそうです。

訪れたのは「慶州ヘジャンクク」で、店先には「元祖 慶州ヘジャンクク」と大きく掲げられています。煮干しの出汁に、ムクとモヤシが入っていました。ムクは見た目はそばのようですが、食べてみると寒天のようなプルッとした食感です。肉が入っていないので注文するか少し迷いましたが、頼んでよかったです。煮干しの出汁が効いたスープに、モヤシとムクの食感が合わさって、思っていた以上に食べやすい味でした。ご飯と一緒に食べると、朝食にも良さそうです。

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着いてすぐに名物を食べられたのとは反対に、夜ご飯には苦労しました。宿のあるバスターミナルのあたりは、泊まる人が多そうな場所なのに、20時には予定を繰り上げて閉めている店が多く、そもそも店がないところもありました。釜山と違って、営業時間内でも開いていない店が多く、3軒ほど入れませんでした。それでもバーガーキングとマクドナルドは無事に回避できました。

店を探すのに、地図アプリもあてになりませんでした。Google マップも Naver マップも、情報が古かったり、載っている場所にお店がなかったりします。慶州は全体的に、ほかの地域よりも地図アプリが頼りにならない印象です。

そんな中で入れたのが「37年伝統 チャントクッパ」で、アロンサテ・チャントクッパを食べました。チャントクッパは慶州を含む慶尚道の市場で食べられてきた牛肉のクッパで、アロンサテは牛すね肉の中の希少部位です。このお店は、Google マップにも Naver マップにも載っていません。

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史跡をめぐる

慶州に着いた日は、日が暮れるまでまだ時間がありました。明るいうちに、市街地の史跡を見て回ることにしました。

瞻星台(チョムソンデ)は、新羅の善徳女王の時代(7世紀)に造られたとされる、東洋最古の天文台といわれる石造物です。ドラマの「善徳女王」を観たときは、朝鮮時代とそれほど変わらない時代の話だと思っていましたが、実際はずっと昔のことでした。新羅は伝承上、紀元前57年から935年まで、約1000年続いた国です。あまりに長くて、時代の感覚がつかめなくなってきます。

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瞻星台と月城のあいだには、鶏林(계림)という森があります。古木の下を覆っていた紫の花は、ヤブランの群落でした。王家の誕生にまつわる場所だと知らなくても、古木と紫の花に囲まれた景色には、どこか神秘的な雰囲気がありました。

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日が落ちると、街はかなり真っ暗になります。街の規模は大きいのに、街全体が遺跡の一部になっていて、ライトアップ以外の照明は必要最小限に抑えられていました。遺跡を照らす明かりを頼りに、自然を楽しむような街です。

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その暗さの中で、東宮と月池へ行きました。新羅時代の離宮跡で、月池は674年に造られた人工池です。ライトアップされた建物が水面に映り込み、夜なのに観光客がとても多かったです。

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レンタルの MTB で仏国寺へ

翌日は仏国寺に行きました。バスだと往復2時間以上と出て、AI には「自転車で行く距離じゃない」とアドバイスされました。それでも、自然の多い道をバスで1時間かけて移動するのはもったいないと思い、天気もよかったので、宿の近くですぐに自転車を借りました。

慶州では Uber のような配車サービスが使えず、電動自転車のレンタルは30分で1000円ほどかかるので、電動ではない自転車にしました。借りたのは、サムチョリ自転車のレスポ「27.5 ラピタ DISC」という、27.5インチの MTB タイプの自転車です。前輪は27.5×1.95のタイヤで、後輪にはシュワルベの Rapid Rob が付いていました。

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仏国寺へのルートは大きく2つあり、田園地帯をまっすぐ走るルートと、普門湖のあたりを走るルートです。慣れない MTB なので、行きは田園地帯のルートを選びました。ほぼずっと平坦で、素晴らしい田園風景でした。

途中、善徳女王の陵に寄り道しました。少し山道を歩いた先の、人の気配がない静かで神秘的な場所でした。

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走ったあとに、慶州のご当地メニューのソモリコムタン(牛の頭肉のスープ)を食べました。空腹のまま走ってきたので、スープが染み渡りました。パパイヤにアミをのせたパンチャンは初めて食べましたが、普通にいける味でした。

店名の「금두꺼비(クムトゥッケビ)」は「金のヒキガエル」という意味です。メニューにもヒキガエルと書かれていて覚悟しましたが、縁起物にちなんだ名前でした。

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仏国寺へは、ロードバイクの集団に混じって、16kgもある MTB で山道を登りました。仏国寺は751年、新羅時代に造営が始まったお寺です。木造の建物は16世紀末に焼失しましたが、多宝塔・釈迦塔などの石造物は8世紀のものが残っています。韓国で仏教建築を見るのは新鮮でした。

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仏国寺から市街地に戻ってからは、形山江の河川敷やサイクリングロードも走りました。河川を見ると走りたくなります。

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この日は MTB で43km走りました。自分の自転車なら大した距離ではありませんが、慣れない MTB だったので大変でした。それでも、自転車道が整備されていて気持ちのいい道が多く、慶州は自転車向きの街でした。この MTB も悪くなく、MTB ツアラー的な自転車に乗ると、こういう感じなのかもしれないと思いました。これをきっかけに、MTB や27.5×1.95のタイヤが気になり始めています。

市街地のすぐ近くには500〜700m級の山が連なっていて、広い盆地の中に古墳や史跡と自然が一緒に残っています。どの山も登りやすそうなので、次は自転車で登ってみたいです。

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2日目の夜

夜は皇理団ギルを歩きました。梨泰院の経理団通りとは全然違って、どちらかというと益善洞寄りだと思います。

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夕飯は前日と同じ「37年伝統 チャントクッパ」へ。黒豚のプルコギは今まで食べたことのない甘くて優しい味付けで美味しく、柑橘系のキムチも絶品でした。

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高い料理が美味しいのは、食材が良いので当たり前だと思います。自分が韓国料理を好きなのは、制約の中で工夫して美味しく作る料理人を尊敬しているからです。個人経営の店がそれぞれ工夫していて、地域によって食文化も異なり、その土地の食材の魅力を引き出そうとしています。食文化が底知れないので、韓国には少しずつ地域を変えて訪れたくなります。

翌日は KTX でソウルへ移動しました。ソウル入りと展示の様子は次の記事に書きます。